7. ナチは悪だが……
NHK『映像の世紀――ヨーロッパ2077日の地獄(第一部)』を見ました。
高精細、カラー化された映像によって当時のすがたが再現され、考えさせられます。
ヒットラーといえば、右手を斜め上方にピンと伸ばして熱弁する姿が有名ですが、1944年秋から1945年2月までの半年間、一切、表舞台に姿を現しませんでした。
戦況が悪化して暗殺を恐れ、身を隠していたとの説もありましたが、映像はもう一つの理由を語っていました。パレードの人混みの中、ヒットラーは親衛隊の若者の肩を何度も右手で称えるのですが、隠すように脇に添えた左手は細かく震えていました。将校と握手するシーンでも後ろ手(左手)は小刻みに震え続けていました。
パーキンソン病を患っていたとNHKは解説していましたが、そうだとしたなら、ハンカチを握りしめたヒットラーの左手の動きは病による不随意運動(ジスキネジア)だったのでしょう。
ドイツは1943年以降、劣勢になりましたが、この時すでに総統ヒットラーにはパーキンソン病による幻覚、保続(固執)、認知障害等の症状が出ていたのかもしれません。
「今度はイタリア抜きでやろう」
かつてミュンヘンのビアホールで酔っ払いのドイツ人に絡まれ、握手を求められたことがあります。日独伊三国同盟でいち早く離脱したイタリアを揶揄したかったのでしょうが、面くらいました。
ドイツでは今、AfD(極右政党・ドイツのための選択肢)が躍進しています。
2025年4月に行われた世論調査の支持率トップは、AfDでした。外国人に対するごく当たり前の不安が既存政党やメディアに見過ごされ、軽視されてきたことに対し、不満を持つ層が増えたのでしょう。ドイツ国内で外国人への懸念を表明したなら、すぐ「ナチスは悪だ、外国人へのヘイトは許さない」としてしまうリベラル派に若者の不満は高まっています。
既存政党とメディアの体たらく、国民の意識の変化……。
傾向として、日本も似通ってきています。
バランスを失ってはいけませんが、現実の脅威に対して、懸念を表明することはいつの世も必要です。外国人に対して厳しい意見を言うのを控えたり、バランスを欠いて外国人を批判したり、擁護し続けることは国益を損ないます。
