12. 麻薬のグローバル化はダメ
サントリーHD会長の新浪剛史氏の辞任は衝撃的でした。サントリーがもし上場会社だったら、9月2日以降の株価はどうなったでしょう?
実は、国土資源総研レポート 5(7月23日)にも同氏は登場しています。
2012年、都内ホテルで開かれた財界朝食会のテーマは「外資の土地買収」。
プレゼンター(東京財団研究員だった私)がいう「外資買収の規制論」に正面切って反対したのが新浪氏(ローソン社長:当時)でした。
「そんなことできっこない」「利用規制しか方法はない」と何度も反論されました。
2025年7月の参議院選のときにも、
「外国人とは(先入感をもつことなく)共生すべき」と、強調されました(共同通信:7月19日)。経済同友会の代表理事として、参政党や国民民主党などが掲げる外国人政策を牽制されたのでしょう。
新浪氏をめぐる今回の一連の大麻疑惑の結末については、捜査の進展を待たなければなりませんが、8月21日の自宅へのガサ入れ以前に、福岡県警は報道されていない有力な証拠と売人リストをもっていたと見込まれます。
かつて私は青森大学の薬学部で、麻薬や毒物・劇物の扱いを講義していました。2、3年生と5年生に麻薬及び向精神薬取締法、覚せい剤取締法、大麻取締法など、薬事関係法規と制度を教えていました。大麻については、2023年の法改正・廃止によって「麻薬」に位置づけられ、その扱いは「使用」も含めてより厳格になっています。
今回、騒ぎになった大麻由来成分のうち、THC(テトラヒドロカンナビノール)は一定以上含まれていると違法でアウト。CBD(カンナビジオール)は合法(セーフ)とされています。米国産品は国産品とちがって前者THCの混じり具合が製品情報として不確かです。
でも、その不確かさを承知の上で国産でなく、あえて米国産品を選択し、注文した時点で社会的地位をもつ者としてはふさわくない、サントリーウェルネスをはじめ健康食品を扱う企業グループのトップとしてアウトということになったのでしょう。
国によって麻薬の扱いは違います。
国ごとに歴史、文化、言語、そして国情がちがうから、異なるルール(法律)があるのです。グローバル化にはなじむものとなじまないものがあります。
領域の帰属(国土の所有)を際限なくグローバル化することは、麻薬と同様、なじまないと思います。
