私たちの大志Our Vision & Voices

ムクナ豆博士の日誌

17. 植物の味覚

植物の視覚、聴覚、嗅覚、触覚を書いてきましたが、五感の最後に残った味覚――について紹介してみたいと思います。

食虫植物についてです。

ムクナ豆博士の日誌14「植物の触覚」のところでも出てきましたが、食虫植物は世界で600種以上。ここ20年で新種が100種近く発見されました。挟み込み式、粘りつけ式、落とし穴式などがあります。葉や茎が捕虫器官となり、光合成だけでは不足する窒素やリンを得るために、虫かごみたいな牢獄やハエ取り紙で虫を閉じ込めたり、手足を動けないようにして、その養分を吸い取っていきます。

食虫植物には嗜好があるようです。

モウセンゴケの本来の好物はハエとカ、ガガンボ(大蚊)です。その粘っこい鳥もちのような触糸で昆虫を捕まえ、触糸の腺から出された消化液で吸い尽くしていくのですが、昆虫以外の、たとえば風が運んできた小枝や実験用のガラス棒ではまったく反応しません。肉片や毛髪などの窒素分が混ざった物質だとすばやく反応して消火していきます。そのスピード差は肉片と昆虫だと、前者は5倍も素早いです。昆虫は硬い骨で包まれているので、食べ物かどうか判断するのにちょっと時間がかかってしまうのでしょう。

ダーウィンによると、卵白やチーズ、唾液、骨のかけら、尿など窒素分を含んでいるものは大好きですが、砂糖や紅茶はお気に召さないようです。

ウツボカズラの好物はハエ、ゴキブリです。蓋のついた捕虫袋は、30㎝を超えるものもあり、蜜のような甘い香りを出したり、腐敗臭いのする液体を用意したりして、それらを好物とする生物をおびき寄せ、袋の中に閉じ込めてしまいます。オオウツボカズラなどはネズミさえ消化してしまうそうですから、その袋はまるで動物の胃と変わらないです。

放射線上に伸びるモウセンゴケの触糸
(出典:ウィキベデア)