私たちの大志Our Vision & Voices

国土資源総研レポート

21. 高市内閣の外資買収対策

高市内閣が外国人対策にとりかかるということで期待は大きく、矢継ぎ早に会議が開かれています。11月4日には「外国人政策に関する関係閣僚会議」がありました。何かが進むのではという期待と不安からか、こうした動きは大きく報道されています。

外資土地買収に関して言えば、筆者は「そう簡単にはいかない」と予想しています。来年1月を目途に新たな総合的対応策をまとめ、3月閣議決定、閣法(内閣法)として来春の通常国会へ法案(又は現行法令の一部改正案)提出という予定が考えられます。

その中身について現時点で占うと、

①国交省は都心のマンション取引実態調査を行い、
②農水省は林地売買の事後届出書に国籍記載を義務付けることをルール化するでしょう。
③現行の重要国土等調査法の5年後見直し(内閣府)は2026年ですので、同法の適用範囲(注視区域)が少し拡張されるかもしれません。

でもよくよく考えてみると、上記①②③はいずれも「調査」「利用」にかかる規制で、「所有」(売買取引)を規制するものではありません。利用状況を調査し、利用面で問題がないかどうか資料提出を求めるだけで、「立ち入り調査は機能阻害行為が見えないとダメ」というレベルです。これまでどおり外国人は日本国土を自由に買えることに変わりはありません。

したがって、この程度の対策では巧妙に広がっている現下の外資買収の動きに影響することはほぼないと思われます。外国人は今、「日本で作った法人名」で買っていますし、「不動産信託受益権」を使うと所有名義と権利が分離され、所有者は信託銀行等になったりします。

果たしてこの程度の規制対策で「良し」とするのでしょうか?

それとも「まだまだ手ぬるい。もっと規制を」と踏み込めるでしょうか?来年以降、「空室税」や「上乗せ印紙税」、「超短期譲渡税」等が新設されると、少し風向きが変わるかもしれませんが。

こうした議論は本来ならば15年前の2010年にしたかったですが、すでに相当数が買われてしまいました。筆者が推定する買収済面積は、森林買収10,396ヘクタール(林野庁)の10倍、農地買収493ヘクタール(農水省)の100倍、都心高層マンション取得(三菱UFJ信託銀行が2~4割と推定)の4割以上が外資によるものでしょう。

かなり手遅れで残念ですが、それでも今、国民的な議論をしておく意味は大いにあり、一歩前進したと思っています。

大阪市南港のメガソーラー(上海電力HPより)