私たちの大志Our Vision & Voices

国土資源総研レポート

4. 学校と港も買われている

釧路には一時期住んだことがあるので私は土地勘があります。

先頃、同市内の私立高校を中国資本が買収する動きがありました。アイスホッケーの強豪校なのですが、若者の人口減はいかんともし難いのです。また2025年7月8日、同系列の釧路短大(2026年春から募集停止)の譲渡について、中国系の学校法人(沖縄sola学園)が釧路市に要望書を提出しました。市長は「大変ありがたい話」と応じましたが、沈滞する街にとって中国マネーは希望の光のように映るのでしょう。

教育界ばかりでありません。港湾周辺の買収も進みそうです。

釧路港はアジアの不凍港として北米に最も近く、北極海航路の拠点として期待されていますが、同港に隣接する80ヘクタール(日本製紙跡地)が2021年に売りに出されました。「国内に買い手はいない」としばらくは諦めムードでしたが、ここにきて動きがありました。中国企業が「宅地開発とデータセンター向けに利用したい」と当地を視察(2025年春)したのです。仲介者は、太陽光発電に早い段階から参入していた大手通信系企業。この先、同港隣接地の外資買収に加え、港湾運営会社の株式取得等も進んでいく可能性があります。

学校買収と港湾周辺買収――。

北海道全域の事態は深刻で、苫小牧市や稚内市でも似た動きが見られます。

こうした流れの行きつく先は、世界に類例、先例があります。パキスタンのグワダール港(40年間リース)、スリランカのハンバントータ港(99年間リース)、カンボジアのコー・コン港(99年間リース)などです。中国によって民生用の港湾が軍事基地との併用可能な態様(dual use方式)にしつらえられ、後背地(工業団地等)の開発もセットで進められていくのです。

将来、可能性として釧路港にも中国の国防交通法が適用されるかもしれないことを知っておくべきでしょう。

北極海航路の新拠点になり得る釧路港。

※1 北海道建設新聞2025.7.9
※2 塚田俊三 https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69647 
※3 2016年制定の法律:すべての運輸施設は必要な時には、直に軍用に転用できるように軍の施設基準に適合させて建設しなければならず、緊急時には軍の徴用に服さなければならないと規定。
※4 海外にいる中国人は、①国防動員法と②国家情報法の下に暮らしていることを知っておくべきです。①国防動員法は「有事の動員(破壊活動や軍事活動を行う要員となり、物資も供給する)と平時の動員準備を義務付ける」ことを規定(2010年制定)。海外在住者にも適用。②国家情報法は「中国の国家安全を維持するため、国家情報活動への協力と秘密保持を義務付ける」ことを規定(2017年制定)。海外在住者にも適用。