5. 外資の土地は利用規制で!外国人とは共生すべき?
十数年前、都内ホテルの朝食会に参加したことがあります。
集まったのは財界トップで、テーマは「外資の土地買収」。日本の惨状と諸外国の規制ルールを報告しましたが、お歴々の反応は今ひとつ。やや白け気味でしたが、その中でひとり気を吐く経営者がいました。
「そんな所有を規制するなんて無理ですよ」
「利用規制※1しかできないよ」「(土地は)利用で制限するしかないよ」
きっぱりと、また何回も「所有規制はいかん」とダメ出しし、喋り終わるや、早々に退席してしまいました。のちの経済同友会代表幹事です。その決めつけぶりと強引さにあっけにとられましたが、外資規制を阻む人たちは、こういうところにいるんだなぁと体験できました。
――それから13年を経た2025年7月。
経済同友会は夏季セミナー(於:軽井沢)を開き、参院選の争点となった「外国人政策」を議論しました(共同通信2025.7.19)。記者たちを前に代表幹事はこう呼びかけました。
「外国人は悪いと決めつけてはいけない」「人口減少や人出不足を乗り切るためには、外国人との共生を考える必要がある」
タイミングは参議院選挙の前日です。財界として、跳ねた主張で伸びてきている政党に対し、一言ハドメをかける必要があったのでしょう。
でも「共生」※2って分かりづらいです。
通常私たちは、「共生」ということばを生態学でいう「片方(別種)がいなければもはや生きていけない」という相利的共存の意味で使うことが多いですが、人間界でそう(共生)することは可能なのでしょうか?
豊かな上層同士だと共生はできるかもしれません。余裕がありますから。
でも、そうでない日本人は同じ労働者として外国人と競合したり、同一生活圏の中で慣習が違うことによってうまく折り合えず、将来的にずうっと「相克」(闘い)を続けるのではないでしょうか。

※1 日本では「土地の利用規制」はそもそも個人の財産権が強すぎるので、うまく機能していません。外資買収規制を所有の規制ではなく、利用規制の分野に持ち込んでいくのは骨抜き規制を増やすだけになる懸念があります。個人の財産権が強すぎるケースとして、例えば、行政が「違法開発や違法建築」の是正を命じても、訴訟に持ち込まれ、行政が民間に負けることがしばしばあります。憲法第29条「財産権の保障」があるためで、公益のための規制より、個人の財産権の保障が上位にきます。日本では法律違反でも「やったもん勝ち」※1になることが少なくありません。憲法第29条は外国人であっても日本国内では適用されるので、違法建築、違法開発の黙認が増えないことを祈りたいです。
※2「共生」とは語源的には相生(そうしょう:活かし合う)と相克(そうこく:争うこと)から成り立っています。