2. カシアスクレイの聖火
アトランタ五輪(1996年)の開会式はショックでした。
開会式の最終ランナーとして聖火台に上がったのはモハメド・アリ(カシアス クレイ)。その顔は能面のようで表情はなく、震える両手でもったトーチが左右前後に大きく揺らぎ、なかなか着火できません。何億人もが固唾をのんで見守る中、何度も失敗しながらようやく着火できました。
いったいどうしたんだ!アリはなぜそうなってしまったのだろう。
解説者の説明によって、それがパーキンソン病の症状であると知りました(たぶんジスキネジアという不随意運動だったのではないでしょうか)。
それにしてもなぜ、あんなに強く勇敢だったボクサーがこんな姿に……。
それから2年後の1998年――。
元気だった母が その難病にかかり、日に日に動けなくなっていきました。難病に無知だった私は、その時はじめてパーキンソン病の怖さを知りました。
助けたいけれど助けられない。遠く離れての介護は思うようにはなりませんでした。
それが今も心残りですが、ムクナ豆を食したことにより、医師からの薬(レボドパ)の量は増えることはなく、母には目立った不随意運動(ジスキネジア)は現れませんでした。
それは救いだったと思っています。
